中国滞在記
坂本憲昭(3期) 
 女生徒達と。つい、しまりの無い顔になりますナ。

過日、「峠」のHPで皆さんの夏のキャンプ・登山の報告を読み写真を見ました。皆、もういい年なのに童心に帰って楽しそうですね。パエリヤを始め豪華な夕食に、ワンゲル時代のご馳走といえば豚汁程度で、行動食は乾板と粉末ジュースに魚肉ソーセージだった頃を思い、昔日の感しきりでした。

連れ合いによると、日本はもう秋風が立つ候になったとか。ここ長沙は連日の37-38度の猛暑もやっと収まり1週間ほど前から、日中はともかく、朝晩は涼しさを感じる気候になってきました。

ここに赴任して1ヶ月ほどが経ちました。何にでも唐辛子を使う湖南料理の辛い味にも慣れ、快適なキャンパス生活を送っています。大学側の外国人教師へのサポート体制もシッカリしており(英語科・日本語科のボランテイアの学生2名や英語を話す国際交流センタ-職員2名が外国人宿舎に常駐)中国語を全く解さない小生でも生活上の不便は全く感じません。キングサイズベット、TV, コンポ付きdesktop PC,WC,Shower付きの部屋と、同じ広さの専用キッチンが与えられています。キッチンにはガスレンジ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機があり自炊が可能です。

湖南省は毛沢東や劉少奇を生み出し、省都の長沙は人口約800万人の大都市です。
この湖南渉外経済学院は学生数約32千人の私立の文化系総合大学で広大なキャンパスには各学部の校舎、事務局、体育館、図書館、13の学生食堂や職員用のレストラン、ほぼ全寮制のために団地並みに立ち並ぶ学生寮、診療所、郵便局、銀行、いくつかの公園に商店街等があります。要はバス(全線一元)で20分程の街まで出なくてもキャンパスの中だけでも生活できるようになっています。学生食堂の料理は3.5元から4元(60円)の安さです。
外国語学部には英語科、日本語科、韓国語科があり、第二外国語としてドイツ語科があります。
日本語科は学生数約800人、講師陣は中国人17名、日本人は小生と中年の女性(旦那が中国人)の2名です。
小生の担当は2年生・全6クラスへの「日語会話」と3年生1クラスへの「作文指導(一般作文、商業文、論文等)」です。
1回の授業は90分。1週間(月-金)で7回の授業なので、時間的には比較的余裕がありますが、空いた時間は授業の準備、資料の用意、生徒の作文添削、会話の練習や個人的指導を受けに部屋に来る生徒への応対で1週間の経つのが速く感じます。(先回は担当の全生徒約330名の背景を知るために「自己紹介」と言う宿題を出したので、連日深夜2時・3時までの添削作業をし、赤ボールペン2本半を使う量となりました。)
1クラス、45名から50名のうち男子生徒は数人しかおらず女子大で教えていると言う実感です。
当初驚いたのは、授業を始める前に皆が一斉に起立して「センセーオハヨーゴザイマス」と大声で挨拶し、終わりにも再び起立して「センセーアリガトーゴザイマシタ」と挨拶したことです。これは全クラス同じで、今も変わりません。このように躾られているのでしょうが、今時、日本の大学で生徒から講義の始めと終わりに、同じような挨拶をされたら教師は夢かとばかりに感激の涙にむせぶのではないでしょうか。
大学の正門。広い学内はこのトローリーカートで移動します。
1回1元(15円)


大学のメインストリート
9月10日「教師の日」に各クラス代表がプレゼントを手に部屋へ挨拶に来ました。中国ではこの日は全国で生徒が教師に感謝をする日とか。知らなかったので、生徒の謝意とプレゼントに感激した次第。
こちらの女生徒は皆、化粧っ気が全くなく素直で明るく無邪気なので、大学生と言うより高校生を相手にしているかのようです。以前、日本のテレビで見た「女の品格」を書いた女性学長の講義風景での女子学生とは格段以上の差です。今から夜のお勤めに出掛けるような、派手な衣装にビックリ狸のようなマスカラー、爪にはマニキュア、講義そっちのけで携帯電話のメールに夢中な学生達を見て「アンタタチ、来るとこ間違ったんじゃないの。それに、先生、他人様に『女の品格』を説く前に足下の生徒の品格を正すことから始めるべきじゃないんですか」と、言いたくなったのは、私一人ではないでしょう。
生徒に誘われて、夕涼みがてら市民の憩いの場となっている300mほどの山へ一泊のキャンプ登山。小生は11時頃、テントに入り寝ましたが生徒達は殆ど徹夜でゲームをしたり、歌ったり、おしゃべりをしたとか。本当に明るく、元気な連中です。山麓の宗時代に建てられた中国4大書院の一つとか言う古刹の門前でチーズ。

作文を読むと、ここの生徒達にとって日本は憧れの地であり、卒業したら日本へ行きたいと思っているのが大半です。こちらに来る前に友人から聞かされていた「反日教育」の残滓は全く見えません。
ただ、日本へ留学するにも、年間100万以上の費用が必要です。私大に通わせる金はあっても、そんな大金を捻出できる親は少ないでしょう。熱心に勉強している彼等の顔を見ていると、このうち実際に何人が日本へ行けるだろうかと思うと切なくなります。学内では日本から来たnativeは小生一人で、次第に顔も売れてきたせいか構内を歩いていると「サカモトセンセー」と女生徒から声がかかることがシバシバです。
65歳にもなって、教室では女子学生に囲まれ、道行く時には「センセー」と声がかかる日が来ようとは思いもしませんでした。教師冥利につきます。
ただ、現役時代でさえ人の名前を覚えるのが苦手だった小生にとり330名もの生徒の顔と名前を覚えることはお手上げに近く、悩みの種です。名前を書いた紙を机に置かせ全生徒の写真をデジカメで取りパソコンに入れて、時間があれば見ていますが、頭に入ったのは何時も前列に座る出来る生徒か可愛い顔をした生徒だけです。(この年になっても、授業中、つい可愛い子に目が行きます。男の性でしょうか....。(-_-;) 

そちらでは9月の連休が終わったところですが、この大学は国慶節の10月1日を挟み9月30日から10月8日までが休みです。日本に帰ろうと思いましたが、既に時遅しで日本行きは何れの航空会社も空席がなくあきらめました。
代わりに当地の旅行社の雲南省・混明と麗江への5泊6日の団体旅行に入ることにしました。言葉は解りませんがガイドに付いて行けばなんとかなるでしょう。麗江は以前から行きたかった所なので、楽しみです。

つい、長くなってしまいました。これからも現役組の業務でのご奮闘と、引退組は秋の歩っ歩会を楽しまれん事を祈ります。
ではまた。
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