第30回 初夏の花(2)
毎日猛暑が続いて、たまに降る雨が嬉しいこの頃ですが、皆様お元気ですか。初夏の花の2回目です。主に由布山系、九重のタデハラ湿原に咲いていたものです。初夏というより夏の花といった方がふさわしいものもあると思いますが、ご覧ください。付録で、由布山系で見かけた、蝶々の「アサギマダラ」写真もどうぞ。
カキラン」  和名 「柿蘭」

花期 6~7月
ラン科 カキラン属 
草丈 30~70cm 花径 1~2cm

山野の日当たりの良い湿地に生える多年草です。名前の由来は花が柿色をしていることから。今まで見たことがなかったこの花を、今月、同じ日に2か所で見ることができました。1か所は倉木山麓、もう1か所は九重のタデ原です。湿地に生育する花といわれますが、倉木山麓は乾燥気味でしたので一概には言えないのでしょうか。地味な柿色の花弁ですが、唇弁には鮮やかな紅紫の筋が入っていて、一見、特異な配色だけれどラン科らしい上品な花です。

キバナカワラマツバ」  和名 「黄花河原松葉」

花期 6~9月
アカネ科 ヤエムグラ属 
草丈 30~80cm 
花径 約3mmの花が多数集まり円錐花序を
    つくる

日当たりのよい乾いた草地に生育する多年草。名前の由来は、河原などによく生えていて葉が松の葉のように細いことから。小さな花が泡立つように咲いていて、群生していると目立ちます。倉木山の麓の草原にいっぱいに群れて咲いていました。
ギンバイソウ」  和名 「銀梅草」

花期 7~8月
ユキノシタ科 ギンバイソウ属 
草丈 40~80cm 
花径 約2cmの両性花10~20個と装飾花で
    集散花序を作る

山地の木陰や谷筋などの薄暗い場所に生育する多年草。名前の由来は花の色と形が白梅を連想させることから。つぼみの時の姿は咲いた時とあまり違うので、それとわかりにくいほどです。1つ1つの少しピンクがかった雄しべの目立つ花は名前の通り梅の花のようです。写真は残念ながら蕾のものだけです。
クサレダマ」  和名 「草連玉」

花期 7~8月
サクラソウ科 オカトラノオ属 
草丈 30~90cm 
花径 1.5cmの花を茎から伸びた円錐花序に
    付けます

湿原や湿った草原に生育する多年草。名前の由来は、マメ科の常緑小低木、レダマ(連玉)という植物に花が似ていることからといわれますが、実際はあまり似ていないようです。タデ原の緑の草の中で、黄色の花が鮮やかに目立っていました。1つ1つの花も整ったかたちで茶色の雄しべがとてもいいアクセントになっています。くれぐれも「腐れだま」ではありませんので、お間違いなく。
テリハアカショウマ」 和名「「照葉赤升麻」

花期 7~8月
ユキノシタ科 チダケサシ属 
草丈 40~80cm 
花径 6~7mmの小花が密につき、円錐花序
    をつくる。

山や丘陵地の草地、林のへり等に生育する多年草。5回でご紹介した「チダケサシ」に似ていますが、花序が水平に広がるのが特徴で、見分けられます。

名前の由来は、根元や地下茎が赤味をおび、葉がショウマの類に似る事から。倉木山登山の道々ずっと咲いていて楽しませてくれました。遠目には白っぽく見えますが、間近く見ると淡いピンクがかって優しい花です。艶のある縁が少し赤みがかった葉も美しく楽しめます。

ノハナショウブ」 和名「野花菖蒲」

花期 6-7月
アヤメ科 アヤメ属の多年草
草丈 60~120cm 花径 約10~13cm

3度目の登場でどうかと思いましたが、倉木山の山頂近くに自生しているのを見て嬉しかったので、再再度登場となりました。合わせてくじゅうのタデ原に咲いていた分もご紹介します。この暑さ厳しい日に、清涼剤代わりになればと思います。
ハナウド」 和名「花独活」
花期 5~8月
セリ科 ハナウド属 
草丈 1~1.5m 
花径 1~3cmの花が集まり散形花序を作り、
    さらにそれが集まって約20cmの複散
    形花序をつくる 

やや湿気た山地や海岸の縁に分布するセリ科の大型多年草です。遠くから見るとシシウドに似ていますが、花序の一番外側の花の花弁がひときわ大きく切れ込みがあるのが特徴で、見分けられます。線香花火のような全体の形も、まるで紙で作った人形のような変則的な小さな花もどこをとっても、他のセリ科の花に比べて可愛い花です。

ハンカイソウ」 和名「樊膾草」
花期 6~7月
キク科 メタカラコウ属 
草丈 1~2m 花径 約10cm

湿原の周辺や、開けた渓谷、湿った草原に生育する。名前の由来は、漢の始祖である劉邦の武将の樊膾(ハンカイ)にちなんだということです。まっすぐに茎を伸ばしてすっくと咲く花の色の鮮やかさや大きさが力強く豪壮な感じで、いかにもいさぎよい武将のイメージなのでしょう。山野草にしては、本当に豪快で夏に似合う花です。
ミズチドリ」 和名「水千鳥」

花期 6~7月
ラン科 ツレサギソウ属 
草丈 50~90cm 花径 1cm


山地の湿原や沼地に生育する多年草。名前の由来は、花がチドリソウに似て湿地に生育することから。湿原の草の間に1株だけ本当に千鳥のような形の可愛い花が、下の方から咲き上がっていました。下の方はもう枯れ始めていますが、上の方はまだつぼみです。はっとするほど純白で美しい花でした。
ヤマホトトギス」 和名「山杜鵑草」

花期 7~9月
ユリ科 ホトトギス属 
草丈 30~70cm 花径 1.5~2cm 


山地に生えるホトトギスという意味で、ホトトギスは花皮片のは何点が鳥のホトトギスの胸の斑点に見立てたということです。他の種とは花弁が強く反り返って、雄しべと雌しべがしっかり見えるので見分けられます。ホトトギスというと秋の花の印象ですが、この種は7月から咲き始めます。山で出会うと鮮やかで、つぼみも花も可愛い花です。花弁の斑点が大きく赤みが強いものや、白が多いものなど、いろいろありました。つぼみの下のふくらみに密がたくさん詰まっているそうです。
ワタナベソウ」 和名「渡辺草」

花期 6~7月
ユキノシタ科 ヤワタソウ属
草丈 40~60cm 花径 8~13mm

日本の四国九州に固有の種で、名前の由来は発見者の渡辺協氏の名前から。15~35cmもあるヤツデのように大きな切れ込みのある葉のまん中から茎を伸ばして、葉に似合わない優しいクリーム色の可愛い花を咲かせます。今では絶滅危惧種Ⅱに分類されている花ですが、この時期、倉木山では登山道沿いにヤマアジサイと一緒にずっと咲いていて楽しませてくれます。よほど密がおいしいのかミツバチが忙しそうに花から花へと飛びまわっていました。
アサギマダラ」 

アサギマダラは、タテハチョウ科マダラチョウ亜科に属します。その名が示すように浅葱色(あさぎいろ)のまだら模様をした美しく上品な蝶です。日本列島を春には南から北へ北上し、秋には北から南へ南下し、時には何百km以上にもおよぶ過酷な長距離移動をすることで知られています。倉木山で1頭(と数えるそうです)だけひらひら葉っぱの上を飛び回っていました。仲間にはぐれたのでしょうか?花に負けないほどきれいなので思わずシャッターを切りました。
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