第29回 初夏の花(1)
例年よりかなり早く梅雨が明けたと思ったらいきなり猛暑で、急遽いろいろなことを夏モードに変えているこの頃ですが、皆様お元気ですか?今回から、初夏の花をご紹介します。もうすっかり緑濃い夏山の装いになった九重近辺の野山で写したものが主です。

ウスノキ」  和名 「臼の木」
花期 4~5月
ツツジ科 スノキ属
樹高 50~100cm 花径 6~7mm

わが国の固有種で、丘陵帯から山地帯の林地に分布する落葉低木。葉腋に緑色で赤みを帯びた小さな釣り鐘状の花を数個付けます。名前のいわれは、実が臼の形に似ていることから。牧ノ戸峠からの登山道にミヤマキリシマと同じ時期に咲いていました。花弁の先をすぼめてうつむいて咲いている姿が可愛い花です。

オカトラノオ」  和名 「丘虎尾」

花期 6~7月
サクラソウ科 オカトラノオ属 
草丈60~100cm 
花径 1~2cmの花が集まって10~30cmの花穂をつくる

日当たりの良い草原に生育する多年草。名前の由来は、長く伸びた花序をトラのシッポに例えたもの。似た花で湿地に生育するヌマトラノオと区別して、「オカ」を冠しています。

久住のたで原の遊歩道の脇に咲いていました。同じトラノオのつく花の中でも、S字にしなやかにたわむ全体の姿もとても美しいのですが、1つ1つの純白の小花も整った清楚な花です。
キツネアザミ」  和名 「狐薊」

花期 5~6月
キク科 キツネアザミ属 
草丈 60~90cm 花径 2~2.5cm

田畑や草原、路傍などに生育する1年草。アザミ属に似ていますが、別のもので、キツネアザミ属として分けられています。
ふつうのアザミは葉がかたく、刺があるのに比べ、キツネアザミの葉はやわらかく刺がない。花も花弁の上の方が白っぽくなっているせいか柔らかな雰囲気です。
道路の脇にすっくと立ち上がって群れて咲いていました。花の前にキツネとつくものは、本物があってそれに似て非なるものという場合が多いようです。
クララ」  和名 「苦参」

花期 6~7月
マメ科 クララ属 
草丈 50~150cm 
花径 小さい花が集まり20~25cmの総状花序を作ります

日当たりの良い山麓や草地,川原などに生える多年草。名前の由来は、根を噛むとクラクラするほど苦いことから、眩草(くららぐさ)と呼ばれ、これがつまってクララと呼ばれるようになったそうです。長者原のタデ原に咲いていましたが、木道から遠く、写真がよく撮れませんでした。
コウゾリナ」  和名 「顔剃菜」

花期 7~9月
キク科 コウゾリナ属 
草丈 30~100cm 花径 2~3cm

適当に湿気がありやや栄養分の良好な場所を好み、路傍・原野・牧草地などに生育する2年草。


名前のいわれは、茎、葉に剛毛があり、触るとざらつき、カミソリで顔を剃る感触があることから。「カミソリ」、または「カオソリ」が変化したものです。タンポポのような花を付けます。
コケモモ」 和名「「苔桃」

花期 6~7月
ツツジ科 スノキ属
草丈 8~20cm 花径 約0.6~1cm

高山帯から低山帯上部の日当たりのよい岩石地や腐植質のある肥えた土地に生える常緑小低木。
名前のいわれは、その小さな姿が苔のように小さく、桃のような実がなることから。

茎は地面を這い、細かく枝分かれした枝先の花序に、白色または淡紅色の釣鐘状の花を数個下向きにつけます。
牧の戸登山口から久住山に向かう途中の西千里には群生が見られます。花びらの先に少し切れ込みが入っていて、その部分がくるりと反っているのがとても可愛い花です。
シモツケ」 和名「下野」

花期 6~8月
バラ科 シモツケ属 
樹高 100~150cm 
花径 4~6mmほどの花が多数集まって咲く

日当たりのよい山野に生育する落葉低木。名前のいわれは栃木県の下野で最初に発見されたため、あるいは花が散房状に密生して咲き、これが霜の降りたようすに似ていることから出たともいわれています。

花の色は濃紅色から白色まで濃淡があるそうですが、紅色科ピンクしか見たことがありません。白い花なら霜が降りたように見えるだろうと思います。
ニガナ」 和名「苦菜
花期 4~7月
キク科 ニガナ属 
草丈 20~50cm 花径 約1.5cm

草原や荒れ地、乾燥した場所から湿潤な場所まで広い範囲に生育する多年草です。名前のいわれは、葉や茎に苦みのある白い乳液を含むことからだそうです。5、6枚の花弁のようなに見えるのは実は1枚1枚が花(舌状花)だそうです。とてもシンプルですっきりした花です。写真はくじゅうのタデ原に咲いていたものです。

ノアザミ」 和名「野薊」

花期 5~8月
キク科 アザミ属 
草丈 50~100cm 花径 4~5cm

山地や里山で普通に見られる多年草。アザミは以前にもご紹介したように種類が多いのですが、この時期の咲くのは「ノアザミ」だけなので、わかりやすいです。色は赤紫が主ですが、ピンクや白もあります。山道によく似合います。
ヒメユリ」 和名「姫百合」

花期 6~7月
ユリ科 ユリ属 
草丈 40~100cm 花径 6~8cm


山地の草地や林内に生育する多年草。

名前のいわれは、全体に花が小型で姿が美しいところから。小さいけれど鮮やかな朱色の花は強烈な印象を与えます。
万葉集にも出てくるそうなので、古くから愛されてきた花ですが、今では絶滅危惧種に指定されているほど貴重な花になっています。写真は九重の野草園に咲いていたものです。
ホタルブクロ」 和名「蛍袋」

花期 6~7月
キキョウ科 ホタルブクロ属 
草丈 40~80cm 花径 4~5cm


明るいやや乾燥した草原や道ばたなどによく見られる多年草。名前の由来は、花の中にホタルをいれて遊んだとか、提灯の古名「火垂る袋」が転じてこの名前が付いたなど、諸説があります。
釣り鐘状の花が茎の先に数個ぶら下がって咲きます。花の色は白~濃い赤紫まで濃淡の異なるいろいろなバリエーションがあります。
マイヅルソウ」 和名「舞鶴草」

花期 5~7月
ユリ科 マイヅルソウ属 
草丈 10~20cm 
花径 小花が集まって2~3cmの総状花序を作る

山地帯~高山帯の針葉樹林等に普通に群落をつくることが多い多年草。名のいわれは、葉の形や葉脈が、鶴が羽を広げたように見えるからだそうです。

緑が濃くなった初夏の久住の山を歩いているとよく群生しているのに出会います。純白の小花は4つの花弁を思いきり反らして、かたつむりの角のような雄しべを突き出して咲く様子は、ハート形の葉の緑を背景に、とても清楚で可憐です。
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