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第25回 黒岳に咲く春の花 | |||||
九州の方は梅雨に入り、雨の多い日が続いていますが、皆様お元気ですか?今回は九重山系の東端にある黒岳に咲く花をご紹介します。黒岳は九重の山の中でも、草原の多いほかの山とは趣を異にし、深い原生林がそのまま残っていて、春は新緑、秋は紅葉を楽しめる山です。また地味だけれど可憐な山野草の宝庫でもあります。頂上まで登らなくても、ソババッケやかくし水まで歩いただけでも黒岳の魅力を味わうことができ、森林浴がてらよく訪れます。そんな黒岳に春咲く花をご覧ください。 |
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「ヤマシャクヤク」 和名 「山芍薬」 花期 5~6月 キンポウゲ科 ボタン属 草丈 40~50cm 花径 4~5cm 14回の項でもご紹介しましたが、黒岳の春の花にはなくてはならない花なので、再度登場です。今年もかくし水の少し手前の斜面にたくさん咲いていました。 |
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「サバノオ」 和名 「鯖の尾」 花期 4~6月 キンポウゲ科 シロガネソウ属 草丈 10~20cm 花径 0.8~1cm 九州の山の渓流沿いの木陰に生育する多年草。花弁のように見えるのは萼片で、青い筋がはいっています。中の鮮やかなオレンジ色が花弁で、余り開かず横を向いて咲きます。 |
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名前の由来は、果実が2枚のプロペラのように開いて鯖の尾のように見えることから。葉は咲き始めのころは褐色で段々に緑色になります。撮影したころはすでに緑色でした。とても小さいけれど、歩いていてもはっと気付くほどに自己主張しています。 |
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「エンレイソウ」 和名 「延齢草」 花期 4~6月 ユリ科 エンレイソウ属 草丈 20~50cm 花径 3~4cm 山地のやや湿り気のある林の中に生える多年草。茎の先に 特徴ある大きな3 枚の葉の先から花柄を出して、とても地味 な小さな花をひとつつけます。花も葉も雄しべも皆3の倍数でできているのが特徴的で一度見ると忘れません。 |
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名前のいわれは、中国で「延齢草根」という名の胃腸薬として用いられているところからつけられたものだという。花の色は、緑から暗褐色まで多様で、白花、赤、紫色などあります。写真は黒岳のもの、尾瀬、寂地山のものなどいろいろです。まだまだ春の花が咲きそろわない原生林の中で大きな葉が目立ちます。 |
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「ユキザサ」 和名 「雪笹」 花期 4~5月 ユリ科 ユキザサ属 草丈 20~50cm 花径 3~4mの花を多数集め花序を作る やや湿り気のある林床に生育する多年生。名前のいわれは雪の結晶のような花と笹に似た葉の形による。5月に黒岳の原生林を歩くとチゴユリとともに迎えてくれる可愛い花です。6枚の小さな花弁をしっかり広げ、林の中でひっそり咲いている姿はまさに雪の結晶のように上品で、笹の葉に似た葉と良い取り合わせの花です。 |
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「チゴユリ」 和名 「稚児百合」 花期 4~5月 ユリ科 チゴユリ属 草丈 15~30cm 花径 1~2cm 低地から山地の落葉樹林の木陰に咲く多年草。和名の由来は、小さくて可愛らしいことから。林の中で、少し緑がかった白い6弁の花が少しうつむき加減に咲いている姿は本当に稚児のように可愛い。黒岳の早春の花が咲き終わった後の樹林の道々にユキザサと一緒に咲いていて、登山の道案内をしてくれているようです。 |
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「ワチガイソウ」 和名「「輪違草」 花期 4~6月 ナデシコ科 ワチガイソウ属 草丈 5~15cm 花径 約1cm 山地の木陰に生える多年草。 白い花に雄しべの葯の柴色がアクセントになっていてとても可愛い花です。名前の由来は、江戸時代に名前が分からないので輪違いという印を付けて置いておいたところ、いつの間にかそれが名前になってしまったということです。 |
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葉の上に細くかよわい柄をのばして先に花をひとつ付けます。よく似た「ワダソウ」とは花弁の先に切れ込みがないことや、細い柄をのばすことで区別がつきます。登山口に入ってすぐの所で、矩面の苔に貼り付くように咲いていて、初っ端から足が止まってしまいました。 |
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「ツクバネソウ」 和名「衝羽根草」 花期 5~6月 ユリ科 ツクバネソウ属 草丈 20~40cm 花径 約2cm 落葉広葉樹林の林床や山道沿いに生育している多年草。4枚の葉の中心から3~10cmの花柄を出して,淡黄緑色の地味な目立たない花を1個上向きに咲かせます。 |
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花弁もなく、雄しべと雌しべがむき出しになっていて、これ花なの?と思わせるような変わった形ですが、大きな4枚の葉と雄しべの葯の黄色と4本にわかれた雌しべの茶色がよいバランスを持っていて趣ある花です。名前の由来は、花や実の形が羽根つきの羽(羽子)に似ているところからだそうです。 |
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「マムシグサ」 和名「蝮草」 花期 5~6月 サトイモ科 テンナンショウ属 草丈 70~100cm 花径 13~20cm(仏炎苞の長さ) 明るい森林や谷沿いのやや湿った場所に生育する多年草。春に球根から茎を伸ばし、2枚の葉と仏炎苞を作り、その中に花序があります。花の苞は緑色のものと褐紫色を帯びるものがあります。名前の由来は茎の模様が蝮に似ていることから。 |
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林の中で初めてこの花を見た時は、「マムシグサ」という名を知らなくても、鎌首をもたげた蛇のような姿にちょっとギョッとしますが、見慣れてくると、すっくと立ち上がった様子や、光に透かして見える筋が美しいと思えます。花には雌花と雄花があり、同じ個体が栄養状態で雌になったり雄になったりするというのも興味深いところです。 |
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「ジロボウエンゴサク」 和名「次郎坊延胡索」 花期 4~5月 ケシ科 キケマン属 草丈 10~20cm 花径 1.2~2.2cm 平地の草地などに生える多年草。伊勢地方でスミレのことを太郎坊、この花のことを次郎坊とよんで遊びに使ったことに由来している。「エンゴサク」は「延胡索」と書き、中国の漢方薬の名前。 |
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ヤマエンゴサクと同様に珍しい花ではなく季節が来ればいたるところで見かけます。しかし一つ一つの花はヤマエンゴサクなどに比べると細身で、まるで空中を魚が泳いでいるような軽やかな愛らしさがありますし、群生しているさまも魅力的でついカメラを向けたくなります。 |
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「チャルメルソウ」 和名「哨吶草」 花期 4~6月 ユキノシタ科 チャルメルソウ属 草丈 30~50cm 花径 7~8mm 山地の渓流沿いの湿り気のあるところに生える多年草。「チャルメルソウ」には多くの種類がありますが、「カンアオイ」などと同じように地域性が強く、限られた地域にしか分布しません。 |
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春、地面を這う葉の間から花茎を伸ばし黄緑色の花をつけます。花弁は紅紫色で長さ約2㎜、羽状にさけて魚の骨のようにも見え、うしろにそり返っています。 |
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原生林の中でひっそり咲いていましたが、今までに見たことのない珍しい形の花です。名前の由来は、果実が屋台のラーメン屋さんが吹くチャルメラに似ていることから。花の名前は「チャルメラソウ」と思っていましたが「チャルメルソウ」が正しいようです。 |
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「ホウチャクソウ」 和名「宝鐸草」 花期 5~6月 ユリ科 チゴユリ属 草丈 30~60cm 花径 2.5~3cm 林縁や谷沿いなどの森林中に生育する多年草。分岐した枝先に1~3個の白い釣り鐘状の花を付けます。花弁の上部は白で先端に行くほど緑色を帯び、美しいグラデュエーションが魅力です。 |
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花びらが開かないので筒状に見えますが、3枚の花弁と3枚の萼片が折り重なって咲いています。 名前のいわれは花が垂れ下がって咲く姿が寺院の建築物の軒先の四隅につり下がっている風鈴のような宝鐸に似ていることから。 |
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「タニギキョウ」 和名「谷桔梗」 花期 5~8月 キキョウ科 タニギキョウ属 草丈 5~15cm 花径 5~8mm 山地の木陰や谷、沢など湿り気の多いところに生育する多年草。1cmにも満たない見落としてしまいそうな小さく繊細な花ですが、キキョウ科らしいさわやかな美しさが魅力です。 |
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ところによっては群生して緑のじゅうたんに白い星をちりばめたように花をつけるそうですが、黒岳では木の陰にひっそり咲いていました。確かに5弁の花を真上から見ると星の形をしています。名前のいわれは、湿った谷筋に多く見られることから。よく撮れた写真がなく、せっかくの可憐な姿をお見せできなくて残念です。 |
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「クルマムグラ」 和名「車葎」 花期 5~7月 アカネ科 ヤエムグラ属 草丈 20~50cm 花径 約2.5mm ナ林などの落葉広葉樹林の薄暗い林床に生育する多年草。茎の先端に白い4弁の花を数個から10数個咲かせます。6枚輪生する葉も特徴的です。 |
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名前のいわれは、6枚の葉が車輪のように拡がる姿から。ムグラは荒れ地や野原に繁る雑草に対する総称。登山道のあちこちに群生していて、花も葉もよく見るととても爽やかで可愛いのですが、名前のとおり雑草扱いされて、気にとめられないでちょっと可哀そうです。 |
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