第21回 早春の花(2)
もう4月に入り、桜の便りも聞かれる頃になりましたが、皆様お元気でお過ごしですか?
早春の花の2回目です。今年は3月に入って寒い日が続き、なかなか春らしくなりませんでしたが、山にも着実に春は訪れています。今回の花は主に大分の黒岳山麓の原生林に咲く早春の花々をご紹介します。

ユキワリイチゲ」  和名 「雪割り一華」

花期 3~5月
キンポウゲ科 イチリンソウ属 
草丈 15~30cm 花径 3~3.5cm

落葉広葉樹林の林下や林縁、時に草原に生育する多年草。一輪の花を咲かせるものに「一華」を冠します。雪を割って一輪の花を咲かせるという意味で名付けられました。

雪解けとともにいち早く枯草の中から芽を出して花を付け、「フクジュソウ」「カタクリ」などとともにスプリングエフェメラル(春のはかない命)と呼ばれています。
3月初めに、もうそろそろかなと黒岳に行ってみましたら、1歩登山道に入るとまだ深い雪に覆われ、特徴ある白い斑紋のある菱形の褐色をおびた葉さえ見ることができませんでした。

3月半ば過ぎ、晴れていたので行ってみたら、途中からまた雪が降り始め、日差しがないと開花しないこの花は、昨日は開いていたというのに花びらをしっかり閉じたままでした。3度目の正直で、2日後にもう一度訪れてやっとしっかり開いているのに出会えました。まだ芽吹いていない原生林の中で、この時とばかりに日差しを浴びてけなげに咲く花は本当にいとおしく、何枚も何枚も写真を撮って帰りました。
アズマイチゲ」  和名 「東一華」

花期 3~5月
キンポウゲ科 イチリンソウ属 
草丈 15~20cm 花径 2.5~3cm

山地の落葉樹林の林床や林縁に生育する多年草。名のいわれは、東の国の一華の意味で、その分布は東日本に多いといわれますが、黒岳の男池近くに咲きます。仲間のユキワリイチゲに比べると、花の色は純白で、一回り小さく、より清楚なかんじです。

原生林の中で、ユキワリイチゲが咲きそろった頃に、少し遅れて咲き始めます。雪解けを待ち、木々が芽吹いて光が届かなくなる前のほんの短い時期に、精いっぱい咲き競う花たちに今年もあえて幸せでした。
マンサク」  和名 「満作」

花期 2~3月
マンサク科 マンサク属 
樹高 2~10m 花径 ~cm

名前のいわれは、花をたくさんつけるので「満咲く」→「満作」とも、早春に咲くことから「まず咲く」が訛ったものともいわれています。

春まだ寒く、落葉樹がまだ芽を出さないころ、山腹に黄色の模様が見え始めると春が来たなと感じます。3月になると、今年はどこそこのマンサクがよかったよと、山登りの好きな友達の間で話題になります。3月の終わりに牧の戸峠のマンサクを見に行きましたら、長者原あたりから吹雪になり、思わぬことに雪をかぶったマンサクを見ることができました。いかにも春1番という感じが出ていませんか?
カンアオイ」  和名 「寒葵」

花期 2~4月
ウマノスズクサ科  カンアオイ属 
花径 約2cm

丘陵の林内に生える常緑の多年草。寒い冬の時期に花を咲かせ、葉の形が徳川家の葵の御紋に似ていることが名前の由来になっています。根茎から褐色の葉柄をのばし先に幅5~6、長さ10~15cmのきれいな斑紋のある葉を付けます。

春先、この葉を見つけて根元の枯葉を手で除いてみると、土の中に花をつけています。お世辞にもきれいとは言い難い、ちょっとグロテスクな花ですが、
誰にも見られず秘かに寒さに耐えて咲いている姿を見るといじらしくなります。花が地面に埋もれているため、種子が広がる範囲が狭く、自生地によって花の色や形や葉の模様が全く変わってくるのもその魅力の一つです。
ハルトラノオ」 和名「「春虎の尾」

花期 4~5月
タデ科 タデ属 
草丈 5~15cm 
花径 2~3mmの花が集まり長さ2~5cmの
    花穂を作る

湿り気のある山地林内の日陰に生える多年草。名のいわれは春に咲き、花穂が虎の尾に似ていることによります。

黒岳の原生林で春先に可愛い葉が芽を出したかと思うといっせいに白い小さな花を咲かせます。訪れたのが少し早かったので、群生とは言えませんでしたが、そこここに咲いていました。虎の尾というにはあまりに小さく、よく見ないと気がつかないほどですが、白い小さな花の先の紫の葯の色が目のようで可愛い花です。
ヤマルリソウ」 和名「山瑠璃草」

花期 4~5月
ムラサキ科 ルリソウ属 
草丈 10~30cm 
花径 約1cm

落葉樹林の林縁や道ばたなどの適度に湿った場所に生育する多年草。名前のいわれは、山に咲く瑠璃色の花、というところから。

黒岳に向かっていく途中、道の矩面に咲いていました。いかにも春先の花らしいワスレナグサに似た可愛い、淡い青紫色の小さな花が地面を這うように咲いていました。咲き始めはピンク色でだんだん青くなっていくようです。帰って写真を見返すと確かにピンク色 のもありました。山道の斜面の少し土が崩れたようなところを好んで咲くようです。
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